
不動産を売却しようとすると、普段まったく聞き慣れない専門用語が次々と出てきます。
「媒介契約って何?」「レインズって初めて聞いた」——そんな状態で担当者の説明を聞いても、なかなか理解が追いつかないものです。

私はかつて不動産ポータルサイト運営会社で10年間、関東の不動産会社1000社以上とお会いしてきました。
その経験から、売主として知っておくと確実に役立つ用語を、シーン別にわかりやすくまとめました。
難しい言葉が出てきたときにこのページを辞書代わりに使っていただけると嬉しいです。
査定に関する用語
売却の第一歩である「査定」の場面でよく出てくる用語です。担当者の説明を正しく理解するために、事前に把握しておくとスムーズです。
一括査定
物件情報を一度入力するだけで、複数の不動産会社に査定を依頼できる方法です。
一社だけに査定を依頼すると相場感がつかめないため、複数社の査定額を比較することが売却成功への第一歩かと思います。
机上査定(簡易査定)
物件の築年数・間取り・所在地などのデータのみをもとに査定額を算出する方法です。担当者が実際に物件を訪問しないため、スピーディーに結果が出ます。
あくまでも概算のため、精度は訪問査定より低くなります。
訪問査定(実査定)
担当者が実際に物件を訪問し、室内の状態・設備・周辺環境などを加味して査定額を算出する方法です。机上査定よりも精度が高く、売却価格の判断に適しています。
机上査定だけで不動産会社を選ぶのは危険です。必ず訪問査定(実査定)に進んで、担当者の人柄や知識を直接確認するようにしましょう。
公示価格
国土交通省が毎年1月1日時点で全国約3万地点を調査し、3月下旬頃に公表する土地の適正価格です。土地査定の際のひとつの指標となります。
国土交通省が運営する「土地総合情報システム」で誰でも調べることができます。
路線価
相続税や贈与税を算出する際の指標となる土地の価格です。公示価格の約8割を基準として国税庁が毎年設定します。
国税庁の「路線価図・評価倍率表」のページで確認できます。売却時には直接使うことは少ないですが、相続がらみの売却では頻繁に出てくる用語です。
アンダーローン・オーバーローン
アンダーローンとは、住宅ローンの残債が売却代金を下回っている状態のことです。売却代金でローンを完済できるため、スムーズに売却できます。
反対に、ローン残債が売却代金を上回っている状態をオーバーローンと呼びます。この場合は自己資金の補填が必要になるか、任意売却を検討する必要があります。
媒介契約に関する用語
不動産会社に売却活動を依頼する際に結ぶ「媒介契約」。種類によってルールが大きく異なるため、しっかり理解しておきたい用語です。
媒介契約
売主が不動産会社に売却活動を依頼する際に結ぶ契約です。契約の種類によって、他の不動産会社への依頼可否・レインズへの登録義務・活動報告の頻度などが異なります。
| 種類 | 他社への依頼 | レインズ登録 | 活動報告 | 契約期間 |
|---|---|---|---|---|
| 一般媒介契約 | 複数社に依頼できる | 任意 | 任意 | 規定なし(目安3か月) |
| 専任媒介契約 | 1社のみ | 7日以内に義務 | 2週間に1回以上 | 最長3か月 |
| 専属専任媒介契約 | 1社のみ(自己発見取引も不可) | 5日以内に義務 | 1週間に1回以上 | 最長3か月 |
不動産ポータルサイトの営業時代、「専任媒介を取れるかどうかが営業の腕の見せ所」という担当者の声を何度も聞きました。
担当者が専任媒介を強く勧めてくる場合は、会社側の都合が優先されていないか冷静に確認することをおすすめします。どの契約形態が自分に合っているかは、物件の状況や希望によって異なります。
仲介手数料
売買契約が成立した際に不動産会社へ支払う報酬です。宅建業法で上限が定められており、売却価格が400万円を超える場合は以下の速算式で計算できます。
売却代金×3%+60,000円+消費税
例)3,000万円で売却した場合:3,000万円×3%+6万円+消費税=約99万円(税込)
成功報酬型のため、売買契約が成立しなければ基本的に支払いは発生しません。
レインズ(REINS)
全国4団体の不動産流通機構が運営する不動産情報ネットワークシステムです。正式名称は「Real Estate Information Network System」。
レインズに物件情報が登録されると、全国の不動産会社(会員)が閲覧できるようになるため、買い手が見つかりやすくなります。専任・専属専任媒介契約を結んだ場合は登録が義務付けられており、登録証明書を必ず受け取るようにしましょう。
レインズ・マーケット・インフォメーション
レインズが保有する直近1年の成約情報を一般公開しているサービスです。実際に売れた価格が掲載されているため、類似物件の相場を自分で調べることができます。
査定額が本当に妥当かどうかを確認する際にも活用できます。
売却方法に関する用語
不動産の売却方法は「仲介」だけではありません。状況によって「買取」や「任意売却」が適している場合もあります。
仲介売却
不動産会社に売却活動を依頼し、購入希望の個人に売る一般的な方法です。相場に近い価格での売却が期待できますが、買い手が見つかるまで時間がかかる場合があります。
買取
不動産会社に直接買い取ってもらう方法です。売却活動が不要なため仲介手数料が発生しませんが、売却価格は相場の6〜7割程度になることが多いです。
買取には2種類あります。
任意売却
住宅ローンの返済が困難になり、売却代金でも完済できない場合に、金融機関の同意を得て抵当権を外した上で不動産を売却する方法です。
競売を回避するための最終手段として位置づけられています。周囲に事情を知られることなく、相場に近い価格での売却が期待できます。
任意売却は金融機関との交渉が必要で、手続きが複雑です。早めに専門家(任意売却専門の不動産会社や弁護士)に相談することをおすすめします。
売却活動に関する用語
媒介契約を結んだ後の売却活動で登場する用語です。特に「囲い込み」と「両手仲介」は、売主として知っておくべき重要な用語です。
内覧・内見
購入希望者が実際に物件を訪問して見学することです。物件の印象を左右する重要な機会のため、室内の整理・清掃や照明・においなどに気を配ることが大切です。
囲い込み
売却を依頼された不動産会社が、自社で買い手も見つけて売主・買主の双方から仲介手数料を得るために、他社からの問い合わせや購入申し込みを故意にブロックする行為です。
囲い込みに遭うと売却活動が停滞し、売却期間が長くなったり値下げを迫られたりする可能性があります。
囲い込みへの対策として、レインズへの登録状況を確認する方法があります。専任・専属専任媒介契約の場合、登録証明書を受け取ったらレインズ・マーケット・インフォメーションで自分の物件が公開されているか確認しましょう。
また別の不動産会社に「この物件を紹介してもらえますか?」と確認してみることで、囲い込みに遭っているかどうかを調べることもできます。
両手仲介・片手仲介
両手仲介とは、売主・買主の双方から仲介手数料を受け取ること。片手仲介とは、売主または買主のどちらか一方からのみ手数料を受け取ることです。
両手仲介は不動産会社にとって収益が大きいため、囲い込みが起きる温床になりやすい側面があります。仕組みとして知っておくと、担当者の行動を見極める際に役立つかと思います。
売買契約に関する用語
買い手が決まった後の「売買契約」の場面で登場する用語です。契約後に「知らなかった」では済まない内容も含まれるため、しっかり確認しておきましょう。
売買契約書
売主と買主が不動産の売買条件(価格・引き渡し日・特約など)を合意した内容を記した契約書です。この書類に署名・捺印することで売買契約が成立します。
手付金
売買契約時に買主が売主へ支払う金銭です。一般的に売買価格の5〜10%程度が目安とされています。
買主が一方的に契約を解除する場合は手付金を放棄し、売主が一方的に解除する場合は手付金の2倍を返還する(手付倍返し)というルールが基本です。
印紙税
売買契約書などの法定文書に課せられる税金です。売買契約書に記載された金額に応じて税額が決まります。
1,000万円超5,000万円以下:1万円/5,000万円超1億円以下:3万円/1億円超5億円以下:6万円(2027年3月31日までの軽減税率適用時)
瑕疵(かし)・契約不適合責任
瑕疵とは、物件に存在する欠陥や不具合のことです。雨漏り・シロアリ・給排水管の故障・近隣の騒音問題なども含まれます。
売主は知っている瑕疵を買主に告知する義務があります(告知義務)。告知しなかった場合、引き渡し後も契約不適合責任として売主が責任を負う可能性があります。
「バレなければ言わなくていい」は通用しません。引き渡し後に瑕疵が発覚した場合、修繕費用の負担や契約解除を求められることがあります。
知っている不具合はすべて正直に告知することが、売主・買主双方にとって安全な取引につながります。
ローン特約(融資利用の特約)
買主が住宅ローンの審査に通らなかった場合、売買契約を白紙に戻すことができる特約です。
ローン特約が付いている場合、買主のローン審査が否決されると契約が解除され、売主は手付金を返還します。売主としてはリスクになり得る条項のため、内容をしっかり確認しましょう。
引き渡し・決済
売買代金の残額が支払われ(決済)、物件の鍵や各種書類を買主に引き渡すことです。この時点で売却が完了します。
住宅ローンが残っている場合は、この日に同時に抵当権の抹消手続きも行います。
売却後に関する用語
不動産を売却した後には、確定申告や税金に関する手続きが待っています。知らずにいると損をする制度もあるため、必ず確認しておきましょう。
譲渡所得
不動産を売却して得た利益のことです。売却価格から取得費(購入時の費用)と譲渡費用(売却時にかかった費用)を差し引いた金額が課税対象になります。
譲渡所得=売却価格 ー 取得費(購入価格+購入時の諸費用)ー 譲渡費用(仲介手数料・解体費用など)
3,000万円特別控除
マイホーム(居住用財産)を売却した際に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です。この制度のおかげで、多くのマイホーム売却では税金がかからないケースも多いです。
適用には「売却した年の前年・前々年にこの特例を利用していないこと」などの条件があります。詳細は税理士や管轄の税務署に確認することをおすすめします。
長期譲渡所得・短期譲渡所得
不動産の所有期間によって、譲渡所得にかかる税率が異なります。
| 区分 | 所有期間 | 税率(所得税+住民税) |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 売却した年の1月1日時点で5年超 | 約20.315% |
| 短期譲渡所得 | 売却した年の1月1日時点で5年以下 | 約39.63% |
短期譲渡所得は税率がほぼ倍になります。売却のタイミングを検討する際には所有期間も確認しておきましょう。
確定申告
不動産を売却して譲渡所得が発生した場合、翌年の2月16日〜3月15日の間に確定申告が必要です。3,000万円特別控除などの特例を使う場合も確定申告が必要になります。
「売却で利益が出なかったから申告不要」と思っていても、特例の適用には確定申告が必要な場合があります。売却した翌年には税理士や税務署に相談することをおすすめします。
まとめ
不動産売却では、査定・媒介契約・売却活動・売買契約・売却後と、それぞれのステップで専門用語が登場します。
すべてを最初から覚える必要はありません。担当者との打ち合わせや書類の確認の際に「あの用語ってどういう意味だっけ?」と気になったときに、このページを辞書代わりに使ってもらえたらと思います。
用語の意味を理解しておくことで、担当者の説明もスムーズに入ってきますし、疑問点を質問しやすくなります。知識は売主にとって大切な武器になりますよ。