
不動産売却の世界に「囲い込み」という言葉があります。
聞いたことはあっても、実際にどういう行為なのか、なぜ起きるのかまで知っている方は少ないかと思います。
私はかつて不動産ポータルサイト運営会社で10年間、営業として関東の不動産会社1,000社以上の商談を行いました。
その現場で見聞きしてきた囲い込みの実態をお伝えします。
囲い込みとは何か
囲い込みとは、売主から専任媒介契約を受けた不動産会社が、他社からの問い合わせを意図的にシャットアウトし、自社だけで買主も見つけようとする行為です。
本来であれば専任媒介契約を結んだ場合、宅建業法により7日以内にレインズへ登録し、他社からも買い手を紹介できる状態にする義務があります。
しかし囲い込みを行う会社は、この仕組みを逆手に取ります。
本来であれば専任媒介契約を結んだ場合、宅建業法により7日以内にレインズへ登録し、他社からも買い手を紹介できる状態にする義務があります。
しかし囲い込みを行う会社は、この仕組みを逆手に取ります。
レインズへの登録義務は形式上果たしているように見せながら、他社からの問い合わせには「すでに商談が進んでいます」などと伝えて断り、自社だけで買主を見つけようとするのです。
なぜ囲い込みをするのか
理由は収益構造にあります。
通常の仲介では、売主側・買主側それぞれの不動産会社が仲介手数料を受け取ります。
しかし自社で売主・買主の両方を担当できれば、両側から仲介手数料を受け取る「両手仲介」が成立します。
売却価格が3,000万円の場合、片手では約100万円、両手では約200万円の収益差が生まれます。
この収益差が、囲い込みの動機になっています。
現場で見てきた囲い込みの手口
囲い込みの手口はいくつかのパターンがあります。
大手不動産会社がレインズに物件を登録する際、図面情報をわざと不鮮明な状態でアップロードしているのを他の不動産会社経由で確認したことがあります。
登録義務は形式上果たしているものの、他社が活用しにくい状態にしておくという手口です。また郊外・地方エリアを中心に、専任媒介にもかかわらずレインズ自体に登録していない会社も複数見てきました。
さらに宅建業法で義務化されている売主への活動報告を怠っているケースも見られます。
報告を行っていたとしても「ポータルサイトからの反響が○件ありました」という内容のみで、レインズへの登録状況や他社からの問い合わせ件数には触れない会社があります。報告の形式だけ整えて、実態を見えにくくしているケースかと思います。
囲い込みはどこで多く起きているのか
大手・中小という規模の差よりも、各会社・各支店・各センター単位で行うところは行う、というのが実態に近い印象です。
地方エリアのほうが囲い込みは圧倒的に多い印象です。売主側のリテラシーが低いこと、企業の法認識がアップデートされていないことが要因かと思います。エリアによっては、どの不動産会社も業法に基づいた報告を慣習として行っていない場合があります。そのような地域では残念ながら「このエリアではこういうものだ」という前提で付き合うしかないケースもあります。
売却が長期化しても囲い込みだけが原因とは限らない
売却活動が長引いている場合、囲い込みを疑いたくなる気持ちはわかります。
ただし売却の長期化には、囲い込み以外の要因も存在します。
- 査定額が周辺相場とかけ離れた高値になっている
- 市街化調整区域など法的制限のある物件
- 極端に敷地面積が大きい・狭小で駐車場スペースがないなど特殊な物件
- 未登記物件など権利関係が複雑な物件
このような条件が重なっている場合は、どの会社に依頼しても販売が長期化する可能性があります。
囲い込みを疑う前に、まず物件の条件と売り出し価格が適切かどうかを担当者に確認することをおすすめします。
ポータルサイト運営会社は囲い込みを止められるのか
「ポータルサイト運営会社が囲い込みを取り締まればいいのでは」と思う方もいるかもしれません。
ただし現実的にはそれは難しい構造になっています。
ポータルサイト運営会社はプラットフォームを不動産会社にレンタルする立場です。売主・買主・不動産会社をつなぐ場を提供しているにすぎず、不動産会社間のトラブルや法的問題には原則として関与しません。
最終的な法的責任は各不動産会社に帰属するため、囲い込みへの直接的な介入は構造上できない仕組みになっています。
囲い込みへの対応は、売主自身が知識を持って動くしかないのが現状です。
囲い込みを見抜くために売主ができること
囲い込みをしている会社かどうかは、表立った特徴では判断しにくいのが実態です。
実際に訪問査定を依頼し、以下を確認することが現実的な対策になります。
- レインズへの登録をいつ・どのように行うか説明できるか
- 他社からの問い合わせ件数を定期的に報告してくれるか
- 活動報告の内容がポータルサイトの反響だけでなく、レインズ経由の動きも含まれているか
エリアによっては業法に基づく報告を慣習として行っていない会社が多い場合もあります。
そのような地域では、評判が良い会社や実際に会ってコミュニケーションの相性が良いと感じた会社を選ぶことが現実的な判断基準になるかと思います。
複数社を比較するためには、一括査定サービスの活用が効率的です。
また媒介契約を結ぶ前に専任媒介のリスクを把握しておくことも重要です。
まとめ
囲い込みは収益構造上、不動産会社にとって合理的な動機がある行為です。特に地方エリアでは依然として見られ、ポータルサイト運営会社も構造上介入できません。
売主自身が知識を持ち、訪問査定の場でレインズ登録や活動報告の内容を確認することが、囲い込みリスクを下げる現実的な対策になるかと思います。


